裏ビデオ黎明期の作品、「洗濯屋ケンちゃん」。我々の聖典(バイブル)と言い切ってしまっても、何ら過言では無い。題名は勿論、1969年から1982年にかけてTBS系列で全国放送された人気テレビドラマ、ケンちゃんシリーズからのもじり。「ケーキ屋」やら「おもちゃ屋」やら「パン屋」やらと、やたら自営業者に肩入れした作品だった。さておき、やはりクリーニング屋もとい「洗濯屋」なのである。
ご存知の通り、今現在は1つの文化的なメディアとして認知されている裏ビデオ。日本最初のモノは、時を遡る事25年前。1981年に配巻された「星と虹の詩」という作品が第一号だと記録されている。ソレまでは「ブルーフィルム」と呼ばれる8mmビデオが愛好者の間では観賞されていた。しかし映写機・作品とも非常に高価だった為、一般に普及するには至らず、ブルジョワジーの優雅な余暇の過ごし方でしか無かったのだ。
海外からの無修正モノも有るには有ったのだが、日本物として世に出たのはやはり先述の作品が最初だった。そこに件の「洗ケン」が登場するのである。出演している女の子、カメラアングル、撮影場所、どれも従来のブルーフィルムには無い要素で、とても新鮮に感じられたものだった。
「ケンちゃ〜ん、」
甘い声で呼ぶ主演女性は、吉祥寺のジャズ喫茶「サムタイム」の女従業員、すなわち素人である。今ほどカジュアルにAVデビュー!という時代では無かった。随分キモが座っているなと思ったが、三原順子パーマと併いまったケバイ容姿は十分な貫禄を感じさせてくれる。
また、作中行われる草むらでの青姦シーンは千葉県浦安市がロケ地。当時海岸だったその場所には、現在かの東京ディズニーランドが建っている。これまた良く出来たお話だと思うのだが・・・。
ちなみに、監督は「怪傑ズバット」にも出演していた自称ロックンローラー藤井智憲氏。日本初の本番ビデオを撮った男として現在も活躍中だ。
販売総数は実に10万本の空前の大ヒット!「2000本売れればまずます」という現在のアダルトビデオと比べるとその凄さが分かるだろう。売り上げは10億円以上を記録したとかしないとか。
又、このビデオは家庭用ビデオデッキの普及に貢献したとも言われている。現在は1万円以下でも購入する事が出来るのだが、発売当初は20万円近くする高額な家電商品だった。街の電気屋さんをひやかすと必ず、「お客さん、今デッキを購入されますと裏ビデオをお付けしますよ。」なんて事が日常的に行われていたのである。つまりは皇太子の結婚がテレビの普及に貢献したように、ソフトがハードを引っ張った。
今は世界基準となっているVHS方式がベータマックス方式に打ち勝った理由も、この「裏ビデオ」がもっぱらVHS方式で供給されていた為らしい。規格争いにも加担したその経済効果は計り知れない。

思えばアレからもう四半世紀が経とうとしている。
果たして次の革命は、いつ誰が巻き起こすのであろうか。